この記事はこちらからの続きとなります。
地域枠のデメリット
1. キャリア選択の制限
地域枠で入学した場合、大学卒業後に特定の地域で働く義務があります。これにより、
- 都市部の病院で働きたい場合に選択肢が狭まる
- 希望する診療科を選べない可能性がある
- 地域の医局に入局しなければならないケースがある
- 地域枠の制約を無視して離脱・辞退した場合には専門医の資格を取得できない
医学部在学中に進路を変更したくなっても、制度上の制約によって自由な選択が難しくなることがあります。
この制限はかなり厳しいものとなっており背くことは原則許されません。当初は結婚などの理由で抜けることもできましたが制度の穴をついた悪質な地域枠抜け行為が多発したためギチギチのルールとなってしまいました。
2. 奨学金の返済義務
義務期間を満たさずに地域枠を離脱する場合、受けた奨学金を一括返済しなければならず、利子が高く設定されている場合もあります。例えば、6年間の奨学金総額が1,500万円以上に及ぶケースもあり、途中離脱のリスクは大きいと言えます。
3. 医療技術やキャリアの制限
地域枠の医師は、設備の整っていない地方病院に勤務することが多いため、最新の医療技術に触れる機会が少なくなる可能性があります。
- 高度な医療技術を学ぶ環境が整っていない
- 症例数が限られ、経験を積む機会が少ない
- 専門医資格の取得が難しくなる可能性がある
4. ライフイベントとの両立の難しさ
地域枠では、30代半ばまで勤務義務が続くことが多く、結婚・出産・育児などのライフイベントと両立しづらい場合があります。特に女性医師にとっては、長期的なキャリア設計を考える上で慎重な判断が必要です。また男性でも親の介護や障害をもつ兄弟などの介助をしなければならない場合でも離脱という条件を満たすことはかなり難しく困難です。また自身が体調を崩して医師として勤務することが難しくなってしまった場合でも休職期間を除いてまた既定の年数復帰しなければならなかったりパワハラ、セクハラを受けても自分で勤務先を選ぶことができないので簡単には転職が出来なかったりと様々な問題があります。高校生のころにここまで想定したうえで地域枠を選べと言っても到底無理な話です。
5. 制度変更のリスク
地域枠制度は各都道府県によって運用が異なるため、卒業後に制度が変更される可能性があります。義務年限の延長や勤務条件の変更などが生じる場合があり、契約時の条件がそのまま維持される保証はありません。つまり自分が条件を飲んで入った時でも後から付け足されたルールに従わなければなりません。とんだ後出しじゃんけんですね。こんなことも平然と許されてしまいます。
そもそもなぜ地域枠制度なんてものがまかり通るのか
小さい村でも医者は欠かせない
これは医師の仕事の特性とも言えます。大きな病気ならば都市部で治療するという選択も取れますが小さなケガや風邪などでも病院は必要ですよね、そんな時にいちいち電車や車で5時間、6時間近くもかけて移動なんてことはできません。つまり地域に一人は医者の存在は必要なのです。しかし日本は東京一極集中で地方は過疎化が進んでいます。少子高齢化の影響もあり地方は病院が必要な人は増えるのに医者はいないという益々苦しい状況に置かれています。何とかして医師を確保したい地方自治体の苦肉の策とも言えます。地域にかかりつけ医すらいないような状況ではますますその地域は衰退の一途を辿ります。
他の学部学科には地域枠など存在しない
医学部以外に地域枠なんて制度はありません。もちろん地域に一人、文学者はいりませんし経済学者もいりません。数学者や科学者も別に各地方にいる必要はありません。弁護士も急を要するケースは多くないので必要に応じてこちらから出向くスタイルで問題ありません。しかし医者は命に関わるためどの地域にも必要です。そうした背景があります。
受験が超熾烈な医学部だからこそ成り立つ制度
上記のような理由があったとしても地域枠は対象者にとってデメリットが大きすぎます。それでもなぜ成り立つのかというと熾烈な医学部受験が一役買っています。ここ30年の不景気により安定した職である医者人気が高まりました。一昔前は金さえ積めば入れたレベルの私立医学部も偏差値が急上昇。医学部受験は一番下の大学でも偏差値60を超え、早慶に受かるような子でも医学部はどこにも受からないなんてことはザラにあります。そうすると医学部に入るために1浪、2浪に留まらず多浪と呼ばれる浪人を3~5年(それ以上の場合も)重ねてしまうこともあり医学部に合格するころには友達はみんな社会人だったなんてことは笑い話ではありません。もちろん浪人を重ねれば受かる保証も無いわけで受験生側からすれば藁にも縋る思いなわけです。そして医学部において18年の試験より明るみに出た女子、多浪、再受験生の大量減点問題が発生。キツイ医学部受験も早く終わらせなければいけないということが明示されてしまいました。そんな受験生の不安を巧みに利用した制度なのです。他の学部ならばレベルの高い大学に入れなかったら自分に入れる大学に行けばいいだけ。それでもあまり進路に困ることはありません。たいてい他の学部では早慶がMARCHになろうとMARCHがニッコマになろうと、多少就活で有利不利があるくらいである程度自分の努力でどうにでもなります。逆にレベルの高い大学にいっていても面接に受からないケースもあります。しかし医者はスタートライン立つことすらできないということが多すぎるのです。
地域枠を選択する前に考えるべきこと
地域枠は金銭的なメリットがある一方で、将来的なキャリアや生活に大きな影響を及ぼします。
以下の点を慎重に検討することが重要です。
- 9年以上の義務勤務に耐えられるか
- 将来的に都市部での勤務や開業を希望しないか
- 自身の興味のある診療科が地域枠の制限に該当しないか
- 経済的メリットよりも自由なキャリア選択を優先するべきではないか
また、高校生の時点で地域枠のすべてを理解することは困難です。入学前に十分な情報収集を行い、将来後悔しない選択をすることが求められます。
まとめ
医学部地域枠制度は、地方の医師不足を解消するための有効な手段であり、学費支援や入試優遇といった大きなメリットがあります。しかし、その一方で卒業後のキャリア選択が制限され、義務期間中の勤務条件が厳しいことも事実です。
地域枠を選択する際は、短期的な金銭的メリットだけでなく、長期的なキャリアやライフプランを考慮することが重要です。医師としての将来像をしっかりと見据え、納得のいく選択をしましょう。