2025.06.13

医学部が簡単に新設できないのはなぜ?~医師不足の真実と制度の壁~

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医学部が簡単に新設できないのはなぜ?~医師不足の真実と制度の壁~

日本の医療現場では長らく「医師が足りない」という声が聞かれています。特に地方や特定の診療科では、医師の不足が医療崩壊のリスクを高めており、医療体制の強化が急務とされています。しかし、医師を養成する拠点である医学部が新しく開設されることは、ほとんどありません。

また医学部にはいわゆるFラン大学が無くどの大学でも偏差値は60を超えており大変な難試験となってしまっています。そういった実情があるにも関わらずなぜ医学部は新設されないのか。

「医師が不足しているのに、なぜ医学部が増えないのか?」——この問いは、多くの人が一度は抱いたことがあるでしょう。実は、そこには複雑な事情と制度上の制約、そして現場からの懸念が絡んでいます。本記事では、医学部を新設することが難しい理由と、その背景にある問題を多角的に解説していきます。


医学部新設には政府の厳しい制限がある

まず大前提として、日本では大学に新たに医学部を設置することに対して、国が非常に慎重な姿勢を取っています。文部科学省と厚生労働省は、医療資源の効率的な配置や医師の質を守るため、長年にわたって医学部の新設に否定的です。

現行制度では、大学や地方自治体が医学部の新設を要望した場合、まずは国の審査を受ける必要があります。このプロセスは非常に厳格で、新設を実現するには医師の供給過剰にならないことや、地域医療への十分な貢献が期待できることなど、多くの条件をクリアしなければなりません。

たとえば、1980年代以降、全国で新たな医学部が設置された事例はごくわずかで、近年では40年近く新設が認められていないという現実があります。被災地復興の名目で東北医科薬科大学と国際福祉大に医学部が設置されたことが最後です。


医学部新設が現場の医師不足を悪化させるというジレンマ

医学部を開設するには、多くの医師が教員として必要になります。一般的に、1つの医学部を新設する場合、およそ300人もの医師が教育や運営に携わる必要があるとされています。

この300人という数字は決して小さくありません。医師を教育する立場にある人材は、通常は臨床経験を持ち、現場で高い技術と知識を備えていることが求められます。そうした医師が教育に専念するために医療現場から離れるとなれば、その地域の診療体制に直接的な影響を及ぼしかねません。

特に医師不足が深刻な地域や被災地などでは、300人単位で医師が医療現場から抜けることは、もはや医療提供体制そのものを揺るがす事態にもなりかねないのです。


医師不足の本質は「数」ではなく「偏在」

日本における医師不足の議論で重要なのは、「絶対数が不足している」わけではないという点です。むしろ、医師の配置バランスに問題があることが、真の課題として浮かび上がっています。

実際、都市部には開業医や専門医が集中している一方で、地方の病院では常勤医が確保できずに外来診療や救急医療が滞るという状況が散見されます。また、産婦人科や小児科、救命救急、外科などの分野では、訴訟リスクや労働環境の厳しさから志望者が少なくなりがちです。

このように、医師が偏って存在している「偏在」の問題こそが、日本の医療体制が抱える根深い課題です。医学部を増やして医師の頭数だけを増やしても、配置の偏りが解消されなければ根本的な解決には至りません。

また直美と言われる医師免許を取っても病院で働かず美容外科クリニックなどで勤務してしまうケースが非常に多くなってしまっていることも課題となっています。


無理な増員がもたらす質の低下への懸念

また、無理に医学部を新設した場合、医師の育成における「質の確保」という別の問題も浮上します。医学部の教育は極めて高度で、少人数制での丁寧な指導が求められます。そのため、教員の数だけでなく、教育水準や研修体制の充実が必要不可欠です。

現在でも、定員を拡大している一部の医学部では、教育の質が担保されているのかという不安の声が現場から上がっています。今以上に学生数を増やせば、教育が追いつかなくなり、結果として医師の資質や技術が損なわれるリスクが高まる可能性があります。

これは患者にとっても大きな不利益です。医師の「数」を優先しすぎて、医療の「質」が犠牲になるような状況は、医療全体の信頼性にも関わってきます。


医師を増やすより「活かす」取り組みを

医師不足を解消する方法として注目されているのが、「すでに医師免許を持つ人材の活用」です。たとえば、出産や育児を理由に現場を離れた女性医師や、定年後も働く意欲のある高齢医師に対して、働きやすい環境を整備することが効果的だと考えられています。

女性医師の場合、育児との両立が困難で離職に至るケースが多く、サポート体制の強化が求められています。託児所の整備や時短勤務の推進、在宅診療など柔軟な働き方を導入することで、医療現場への復帰が促されるでしょう。

また、高齢医師に対しても、専門性を活かせる形での部分的な勤務制度や後進指導への関与など、知見の継承につながる活用が期待されています。


医学部新設の大学側のメリットと実際の課題

大学が医学部を新たに設置したい理由は、必ずしも医療支援だけではありません。経営面でもメリットがあるのです。医学部の学費は他学部と比べて高額であり、特に私立大学にとっては安定した収入源となります。

さらに、国からの運営費補助が支給されることもあり、大学運営全体に好影響を与える場合があります。その一方で、莫大な資金が必要となる初期投資や、運営ノウハウが不足している場合の教育体制構築など、実際には多くの課題もついて回ります。

加えて、既存の医学部は全国の有力病院との関係性をすでに構築しており、新設大学がそれに割って入ることは非常に困難です。その結果、新設された大学では教育・研究・臨床の3本柱を十分に支えることが難しい場合もあるのです。


医学部新設をめぐる現状と今後の見通し

現在、新設を目指す動きはゼロではありません。例えば、早稲田大学や同志社大学などが医学部設置に意欲を示しているとされており、地域との連携や既存の医科大学との統合によって突破口を探っていると報道されています。

しかしながら、これまでの流れを鑑みると、政府の方針が大きく転換しない限り、新たな医学部の開設が容易に実現することは考えにくいのが現実です。


結論:医師数の増加よりも医療の再構築を

医学部の新設は一見すると医師不足の解消に役立ちそうに思えるかもしれませんが、現実はそれほど単純ではありません。医療現場が求めているのは「数」ではなく、「適正な配置」と「持続可能な働き方」です。

本当に必要なのは、医師の働き方改革や診療科・地域ごとの偏在是正、既存人材の活用といった、より地に足のついた施策です。国民にとって安心できる医療体制を築くためにも、まずは現在ある医療資源を最大限に活用し、その上で制度的な改善を重ねていくことが求められています。


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