学習塾業界の現状と今後の展望
2024年、学習塾の倒産件数は53件に達し、過去最多を記録しました。この事態は、塾業界の厳しさが一層増していることを示しています。1月4日には、大学受験予備校「ニチガク」を運営する日本学力振興会(東京都新宿区)が事業を停止し、約1億円の負債を抱えて破産申請の準備に入りました。受験シーズンを目前に控えたこの出来事は、多くの受験生とその家庭に混乱をもたらしました。
医学部受験塾:医専も破綻
医学部受験生も無関係ではなくニチガクは医学部受験塾つまりメディカル医進館という医専を持っておりここに多額の学費を払ったにもかかわらず授業が受けられないという事態になってしまった人もいるということです。医専の学費は高ければ1000万を超えるところもあり、それが返ってきすらしないというのはあまりにもひどい状況です。
そもそもなぜ倒産?
このような状況の背景には、少子化による生徒数の減少が挙げられますが、それ以上に影響を及ぼしたのが、新型コロナウイルスの流行を契機としたオンライン教育の普及です。オンライン塾やデジタル学習ツールの急速な拡大により、従来の対面型学習塾は大きな打撃を受けています。さらに、家庭の教育に対する考え方も変化しつつあり、名門校志向の低下や学歴要件の緩和によって、「受験競争」の風潮が和らいでいることも、塾業界の需要減少に影響を与えていると考えられます。
あなたの通う予備校、医専は大丈夫?
コロナ禍の急激な変化についていけなかった塾が次々と倒産するという事態になっています。コロナが五類に引き下げれて以降給付金や支援金も終了し塾に関わらずあらゆる業界で倒産が起こると予測されていました。コロナが落ち着いてちょうど2年ほど経ち結果が出始める時期となったわけです。
オンライン塾や様々なデジタル学習ツールはコロナ禍関係なく大変便利なものであるとコロナをきっかけに知らしめることとなり、コロナ禍が落ち着いてもこれらの需要は高いままとなりました。地方在住の人でも気軽にオンライン授業でハイレベルな授業を受けれるようになり地域に根付いた塾としての勝負は終わりつつあります。都市部に在住している人であっても都市部に行くには往復一時間以上は平気でかかり、満員電車に押し込まれて通学する苦痛をオンライン授業では味わう必要が無いので首都圏に住んでいてもオンライン授業を受けるという選択は増えてきています。結果として以前は東京の都市部に塾さえ構えていればどこからでも足繫く通ってくれていた受講生が減り、損益分を賄うことができず倒産という流れになってしまいました。
塾業界自体が衰退しているの?
しかし、学習塾業界が全体として衰退しているとは一概には言えません。文部科学省の「子供の学習費調査」によると、少子化が進む一方で、子供の教育費全体は増加傾向にあります。また、塾に通う子供の割合も増えており、特に中学受験や大学受験を見据えた早期の塾通いが一般化しています。これは、学習内容の高度化や、プログラミング教育・英語教育の強化といった国の教育政策の影響もあると考えられます。
また、少子化によって一家庭あたりの子供の数が減少したことで、親が一人の子供にかける教育費は増加しています。より質の高い教育を求める傾向が強まり、個別指導塾や専門的な指導を提供する塾の需要が伸びています。つまり、学習塾全体の市場規模が縮小しているわけではなく、特定の分野に需要が集中しているのです。
個別指導塾の台頭と業界の変化
近年、個別指導塾が急成長しています。従来の集団指導型塾に比べ、個別指導塾では講師1人に対し1~5人の生徒を指導する形式が一般的です。これにより、生徒一人ひとりのニーズに応じたカリキュラムが提供されるため、親の期待に応えやすくなっています。その結果、授業料は高めに設定される傾向があり、収益性の高いビジネスモデルとなっています。
また、多くの個別指導塾はフランチャイズ展開を進めており、全国的に店舗数を増やしています。少子化の影響で競争が激化する中、大手塾に資本が集中し、生き残りをかけた淘汰が進んでいるのが現状です。
塾業界の経営状況と課題:供給過多の現状
学習塾業界の競争は激しく、年間の倒産件数は60〜90件で推移しています。大手塾やフランチャイズ塾であっても、競争の波に飲み込まれるケースは少なくありません。
倒産の原因の一つとして、塾の増加による供給過多が挙げられます。近年、塾業界の参入障壁は低下しており、比較的少ない資本で開業できるようになりました。教材や教育管理システムのIT化が進んだことで、新規参入が容易になった結果、過剰競争が生まれています。競争が激化する中で、差別化を図れない塾は経営難に陥りやすくなっています。
また、新型コロナウイルスの影響で塾業界の二極化が進みました。オンライン授業を導入し、デジタルシフトに対応できた塾は生き残る一方、従来の対面型授業に固執した塾は厳しい経営を強いられました。今後も、この流れは加速する可能性が高く、IT化への適応が塾業界の存続に不可欠となるでしょう。
今後の展望
今後、学習塾業界はさらなる変革を求められます。オンライン教育と対面指導を融合させたハイブリッド型の授業スタイルが主流になると予測されます。また、AIを活用した個別最適化学習や、データ分析による学習支援の導入も進むでしょう。
塾業界が衰退するのではなく、形を変えながら進化していくことが求められています。生徒や家庭のニーズに応じた柔軟なサービスを提供できる塾が生き残る時代へと移行しているのです。
したがって、「塾業界は終わり」という見方は早計です。確かに競争は激化し、淘汰が進んでいますが、それは業界の進化の過程に過ぎません。教育環境の変化に対応し、時代に即した学習サービスを提供できる塾が、今後も成長を続けるでしょう。