2025.01.22

2025年度共通テスト物理の分析:平均点と出題の狙い

2025年度共通テスト物理の分析:平均点と出題の狙い

物理の平均点は60.93点(1月22日発表、中間集計)となり、昨年と大きな変動は見られませんでした。ただし、今年の試験は「考察力」と「文字式を活用した処理」が特に重視されており、受験生にとって取り組みやすい問題とそうでない問題のギャップが目立つ構成となりました。


今年の試験全体の印象

  1. 計算問題の変化
    • 昨年よりも数値計算が減少し、代わりに文字式を使った計算問題が多く出題されました。これは受験生にとって「単純な計算力」以上に「数式の整理力」が問われる傾向を強く感じさせました。
    • 実験や探究活動をテーマにした問題は減少しましたが、単振り子や波動など、一部の問題では計測機器を用いたデータ処理や理論計算が求められました。
  2. 難易度の変化
    • 問題ごとの難易度にばらつきがあり、易しい問題と手間のかかる問題が混在しています。
    • 特に文字式を用いる問題に不慣れな受験生にとっては、難しいと感じる場面が多かったと予想されます。
  3. 設問数と分量の増加
    • 今年は昨年より設問数が増え、さらに組み合わせ問題が昨年より3問多い10問に。全体のマーク数も2つ増加しました。受験生は時間配分が難しかったと考えられます。

出題内容:大問ごとの詳細

第1問:小問集合

  • 概要:力学、熱力学、電磁気学、原子物理からの幅広い基礎問題が5問出題されました。
  • 主な問題
    1. 気体の状態方程式を利用して山頂の大気圧を求める問題。
    2. 万有引力の法則を用いて地球の全質量を計算する問題。
    3. 剛体にはたらく3力の合成を考える問題(受験生があまり見慣れない形式)。
    4. 荷電粒子の運動に関する問題(放物運動や等速円運動を組み合わせる内容)。
    5. ブラッグ反射を題材にした問題(物質波の典型的な内容)。

分析
この大問では、基礎的な物理法則を文字式やグラフを使って解く力が求められました。特に、剛体の3力合成問題は初見性が高く、戸惑った受験生も多かったと思われます。しかし、他の問題は教科書や基本的な参考書の範囲で解答可能な内容でした。


第2問:単振り子の探究活動

  • 概要:単振り子をテーマに、実験データの扱いや誤差の考慮が問われる問題。
  • 主な問題
    • 小球にはたらく力や振動数の計算。
    • ストップウォッチや光センサーを用いて単振り子の周期を測定する考察問題。
    • 地球自転が重力加速度に与える影響を評価する設問。

分析
探究的なアプローチを求められる設問が中心で、特に周期測定方法の考察や地球自転の影響を扱う問題は、教科書の欄外や資料集に記載されている内容に基づいていました。このような細かい知識を普段から意識して学習している受験生は有利だったと思われます。


第3問:A(熱力学)+B(波動)

  • 概要:熱力学と波動に分かれ、それぞれ独立したテーマの問題が出題されました。

A:熱力学(熱サイクル)

  • P-Vグラフを読み取り、状態方程式や熱力学第1法則を使う問題。
  • 見慣れない曲線過程が登場しましたが、基本的な熱力学の知識で解答可能でした。

B:波動(波の干渉)

  • 距離と位相差を考慮した波動方程式の設定。
  • 2波源干渉の条件を考え、強め合いの条件を導き出す問題。

分析
熱力学では曲線過程がやや特殊で、不安を感じた受験生もいたかもしれませんが、標準的な知識があれば対応できる内容でした。波動分野は不得手とする受験生が多い一方、ヒントの多い設問が多く、冷静に考えれば得点しやすい問題でした。


第4問:電磁気(電磁誘導と回路)

  • 概要:レール上を動く導体棒を用いた電磁誘導や、コイルの自己誘導をテーマとする問題。
  • 主な問題
    • コンデンサーを含む回路でのエネルギー変化やジュール熱の計算。
    • コイルを含む回路における自己誘導現象の考察。
    • 理論式とグラフを対応付ける問題。

分析
コイルの自己誘導現象は、過去の共通テストでの出題頻度が低く、苦手とする受験生も多かったと考えられます。ただし、理論式をしっかりと整理できれば十分に得点可能な内容でした。全体的にグラフの読み取りやエネルギー流の考察が中心で、考察力が試されました。


総括:2025年度の出題の狙いと対策ポイント

試験の狙い

今年の試験は、物理の全範囲をバランスよく網羅しつつ、次の3点が特に重視されました:

  1. 文字式を使って計算を進める力。
  2. データをもとに論理的な考察を行う力。
  3. 物理現象をモデル化して理解する力。

学習と対策のポイント

  1. 文字式計算の練習
    数値計算ではなく、文字式を用いる問題への対策が不可欠です。公式や法則を「なぜそうなるのか」を意識して整理しましょう。
  2. 幅広い分野を網羅的に学習
    小問集合では幅広い分野から出題されるため、苦手分野をなくすことが重要です。
  3. 教科書の補足情報も確認
    教科書の欄外や資料集に記載されている情報も活用し、細かい知識を習得しておきましょう。
  4. 実験・探究問題への対応力を強化
    探究活動やデータ処理に関連する問題は、過去問や模試を通じて慣れておくと安心です。

結論

2025年度共通テスト物理は、基礎力を重視しつつ、考察力を問う内容が目立つ試験でした。数値計算が減少する一方で、文字式や理論的な思考力が求められる場面が増えたため、これからの受験対策では「理論を深く理解し、幅広い分野をカバーすること」が鍵となります。

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