女性差別と医学部の現実:厳しい現場と未来への挑戦
医学部の入試における男女比に関する文部科学省のデータが発表され、その内容が注目を集めました。2019~20年の入試において、全国81の医学部医学科を持つ大学における男女の合格比率は、男子が11.25%、女子が9.55%という結果でした。特にこの数値が認知される原因として18年に明るみに出た女子差別問題があります。
これを見ると、全体的には男子の合格率が高いものの、すべての大学で女子の合格率が男子に比べて極端に低いわけではありません。しかし、これは一般的な傾向であり、具体的な大学ごとに状況は異なります。
東京医科大学の一律減点問題
話題となったのは、東京医科大学が女子受験者の得点を一律に減点し、合格者数を制限していたことです。この対応は大きな反響を呼び、女性差別への批判が噴出しました。しかし驚くべきことに、医師の中にはこの大学の対応を理解できると答える人が6割強もいたといいます。
この現象が反映しているのは、女性医師が現場で働くことが非常に困難であるという実態です。
・体力的にもきつい当直の穴埋めをするのは若い非妊娠女医と男性医師
・女性医師は非主要科に偏る
といった現場レベルでの声です。
当然妊婦に当直させるわけにはいきませんし、だからと言って妊娠するな!などと言えるはずもありません。
結果穴埋めに回される男性医師からは当然不満が出てしまいます。これがその場だけの問題にとどまらずではそもそも大変優秀でない限りそもそも医者としても道を閉ざしてしまおう。となり医学部大学入試に反映されたということになります。
医学部というのは特殊で多くの大学が自身の大学病院を所持しています。普通の学科ではそうそうありませんよね?例えば機械工学科が実際に自分の研究室のノウハウを生かした直営店などを持たないことを考えればわかるはずです。
結果として医学部には現場からの意見がダイレクトに届く環境というものが出来上がっていました。
その結果女子医師の稼働の問題点がより鮮明大学に伝わる結果になり女子の数を減らすため減点するという方法がとられたと考えられます。
女性医師の現場での苦悩
それでも勿論女性医師もたくさんいたわけですが、男女雇用機会均等法が制定されて以降も女性差別というものはある程度存在してしまい、当人たちもそういうものと受け入れてしまっているケースが多いです。結果として女性差別が社会の一部として浸透している実態が明らかになりました。
また、長時間労働を強いる大学病院での実態や、妊娠中の医師、子どもや要介護者がいる医師が働きにくい状況も一般には知られていません。医師になったものの、35歳時点で24%の女性医師が離職しているという現実も浮き彫りになりました。
こういった定量的に出されたデータから減点するという判断をせざるを得なかった背景が浮き彫りになります。
また医学部に存在する地域枠ですが女子の場合どうしても夫の仕事の都合や出産、子育て、介護などの理由で様々ノルマを回避するケースが散見しました。今ではルールがより厳格化されてこういった理由でもノルマを放棄できない場合が多いですが
女性医師の数が少ない日本の課題
一方で、女性医師の数が少ないのは日本全体の課題でもあります。厚生労働省のデータによれば、2018年時点で女性医師は全体の21.9%となっています。他の先進国と比較すると、英国やドイツ、フランスなどでは女性医師の割合が高く、日本が最も低いという現実が浮かび上がります。
女性医師への理解と変革の必要性
女性医師が抱える課題は多岐にわたりますが、その中でも特に家庭との両立が難しいという問題が大きな一因です。家事や育児の負担が依然として女性に偏り、医師の仕事との両立が難しい状況が続いています。
この問題に対して、大学や医療機関、社会全体で理解を深め、女性医師が働きやすい環境を整える努力が必要です。医学部の入試においても、一律の減点措置ではなく、実際の業務において発揮される能力を重視する方針が求められます。
女性差別を是正し、優秀な女性医師が働きやすい社会を築くために、私たち一人ひとりができることを考え、行動することが重要です。未来の医療現場を築くために、今できることから始めていきましょう。