2024.11.13

医者になる以外にも道はある?医学部卒業後の多様な進路

医学部卒業後の多様な進路 ~臨床医から産業医、公務員まで~

医学部を卒業した後、卒業生たちは主に医師国家試験に合格し、研修医として医療の現場に入ります。しかし、臨床医以外にも医学部卒業生には幅広い進路が用意されており、これらの進路は医療界全体を支える多彩な役割を果たしています。以下に、医学部卒業後の代表的な進路を詳しく解説します。

1. 臨床医としての道

研修医としてのスタート

医学部の学生の多くが目指すのは臨床医です。卒業後、医師国家試験に合格すると、大学病院や総合病院などで初期研修医として勤務を開始します。初期研修は2年間行われ、この間に内科や外科、小児科など複数の診療科を経験することで医師としての基礎力を磨きます。この経験を通じて、自分の専門としたい診療科を見定めることができます。患者とのふれあいが多くなるため医師としてイメージしている業務になるでしょう。

専門医、開業医への道

初期研修を終えると、選んだ診療科で専門的な研修を開始し、さらにスキルを高めていきます。専門医としての道は厳しいものの、その分やりがいも大きく、医師としてのキャリアが広がります。10年以上の臨床経験を積んだ後、自らのクリニックを開業する「開業医」としての道を選ぶ医師もいます。開業医は診療だけでなく、施設の運営やスタッフ管理などの経営にも関わるため、医療の現場での経験と経営者としての知識が求められます。

2. 研究医としてのキャリア

臨床医と並ぶ人気の進路が研究医です。研究医は医学の進歩を目指し、病気のメカニズムや新しい治療法を研究します。研究医の主な研究分野は、「基礎医学」と「臨床研究」の二つです。前者は人体や生命活動の基本原理を探る一方、後者は病気の原因や治療法に関する応用研究を行います。

医学部の大学院進学

研究医を目指すためには、大学院でさらなる研究を行い、博士号を取得することが一般的です。多くの場合、医師国家試験に合格し、臨床研修を終えた後に大学院に進学するケースが増えています。大学院での研究経験は、研究職や大学教員としてのキャリアを築くために不可欠です。しかしストレートで行っても卒業まで大学から10年かかるためあまり直接行く人は多くありません。多くの場合は研修医を経てから大学院に進学するため、大学院に通い始める年齢は30~35歳頃で、専門知識の習得や研究医教授を目指すキャリアアップを目的として進学するケースが多い傾向にあります。

3. 産業医

産業医は、医療機関での診療とは異なり、企業で働く労働者の健康を管理する役割を担います。産業医の業務には、社員の健康診断、職場環境のチェック、ストレスチェック、個別面談などが含まれます。医師の資格があれば誰でも産業医を目指せますが、所定の研修を修了する必要があります。現在の日本では産業医の数が不足しており、会社でのパワハラや過重労働での精神疾患を患う人が増えており求められている人材になっています。

産業医の働き方専属産業医と嘱託産業医

産業医は、一つの企業に専属で雇用されることもあれば、複数の企業と契約して嘱託産業医として働くこともあります。この職種は、医療業界以外の分野でも医師としての知識を活かす機会を提供し、勤務時間が一定しているためワークライフバランスの観点からも人気です。

4. 医療行政の道

医系技官

厚生労働省や地方自治体の公務員として働く「医系技官」は、保健医療制度の構築や政策立案に携わります。医系技官は医師としての専門知識に加え、行政業務のマネジメント能力も求められます。公務員として地域住民の健康管理や感染症対策を行う「公衆衛生医師」という役割もあり、地域の健康促進に貢献しています。

採用とキャリアパス

医系技官になるためには、医師国家試験合格後に臨床研修を2年間行った後、公務員試験に合格する必要があります。厚生労働省での経験は、多くの医系技官にとって幹部職員へのステップとされ、国際機関への出向の機会もあります。

5. 民間企業でのキャリア 医療系外の進路も

製薬会社での勤務

医学部卒業生の中には製薬会社に就職し、新薬の開発や市販薬の検証に携わる人もいます。新薬の開発プロセスでは、医師の専門的見識が欠かせません。製薬会社では臨床試験の立案、医師の意見集約、学術的なサポートなど多様な業務に従事します。製薬会社の中には、医師としての臨床経験を5年以上求めるところも多いです。

コンサルティング会社

医療分野に特化したコンサルティング会社に就職するケースも増えています。コンサルタントは、クライアント企業の経営や戦略を支えるため、論理的思考力と医学の専門知識を活かして課題解決を図ります。製薬会社の新薬開発や医療機器の市場戦略など、医療関連のプロジェクトに関与することが多く、医師としての視点が重宝されます。

また医学部に入学し卒業できる論理的思考力を買われて通常のコンサルティング会社に勤める人も増えています。医学部は出たけど医療系にはやはり興味がわかなかったという人はコンサルティング業に就職するケースがあります。

6. 公衆衛生医師としての役割

公衆衛生医師は、保健所で地域住民の健康促進を担う医師です。感染症対策や生活習慣病の予防、母子保健、地域包括ケアなど、地域医療の多岐にわたる分野で活動します。公衆衛生医師として働くためには、医師国家試験合格後、地方自治体が行う採用試験に合格する必要があります。臨床医と異なり、夜勤や当直のない勤務形態で、定時の仕事が可能なため、ライフスタイルの安定を求める医師にとって魅力的な選択肢です。

7. 大学院進学とMD-PhDコース

研究医としてのキャリアを考える場合、大学院で博士号を取得するのは一般的です。MD-PhDコースは、医学部4年生までの学びに加え、大学院での研究生活を挟んでから医学部5年生として復帰するというプログラムです。このプログラムにより、研究に早期から取り組むことができ、将来的な研究医としての基盤を築くことが可能です。

まとめ

医学部卒業後の進路は非常に多岐にわたります。大多数が臨床医として勤務医や開業医を目指しますが、研究医や産業医、医系技官、公衆衛生医師、製薬会社やコンサルティング会社への就職といった選択肢も豊富です。これらの道は医師としての知識や経験を活かしながら、それぞれのキャリアでの成長をもたらすものです。どの進路を選ぶにしても、医学部で得た知識と技術が基盤となり、社会への貢献と個人の成長を支えることでしょう

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