2025.11.16

なぜ医学部は「3浪以上」が多いのか?構造と多浪沼を回避する戦略

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なぜ医学部は「3浪以上」が多いのか?データで見る構造と多浪沼を回避する戦略

医学部受験において「多浪(3浪以上)」は珍しくありません。これは医師という資格の圧倒的な魅力に対し、定員が極端に少ないためです。しかし、一般企業の就活とは異なり、医師キャリアでは浪人年数自体が直接的な不利になりにくい特殊な事情もあります。この記事では、文部科学省の最新データを基に多浪が生まれる構造を解き明かし、同時にその現実的なリスク(金銭・精神・留年)を直視します。そして、貴重な時間を失わないために「多浪をしない/多浪から這い上がる」ための具体的な戦略を提示します。

事実:医学部は多浪(特に3浪以上)が相対的に多い

医学部受験は、他の学部と比較して浪人生の割合が際立って高いのが現実です。

文部科学省が公表している医学部入学者の年齢別データを見ると、その実態がよくわかります。例えば、令和4年度(2022年度)の医学部医学科の入学者データでは、現役(18歳)の割合は国公立・私立ともに3分の1程度に過ぎません。

▼医学部医学科 入学者の年齢別割合(令和4年度)

年齢 国公立大学 私立大学 全体
18歳(現役) 36.3% 34.1% 35.4%
19歳(1浪) 30.6% 27.2% 29.2%
20歳(2浪) 10.1% 11.2% 10.6%
21歳(3浪) 4.3% 5.5% 4.8%
22歳以上 18.7% 22.0% 20.0%

(出典:文部科学省「医学部医学科の入学者選抜における 公正化等に関する調査について」(令和4年度))

この表が示すように、2浪(20歳)までで全体の約75%を占めますが、3浪(21歳)も約5%存在します。さらに衝撃的なのは、「22歳以上」の層が全体の20%(5人に1人)もいることです。これには4浪以上や、大学卒業後の「再受験生」が大量に含まれています。

他の難関学部、例えば東京大学や京都大学の理系学部であっても、22歳以上の入学者が2割を占めることはありません。医学部受験は、構造的に「多浪」や「再受験」を多く生み出す、極めて特殊な市場なのです。

なぜ医学部に多浪が集中するのか

この特異な現象は、いくつかの要因が複雑に絡み合って発生しています。

  1. 医師という資格の圧倒的な魅力: 医師免許は、日本で最も強力な「資格職」の一つです。景気変動に左右されにくい安定性、高い社会的地位、専門性、そして(誤解を恐れずに言えば)経済的なリターン。これらを手に入れるための「入場券」が医学部合格です。
  2. 極端に狭い門(需要と供給のアンバランス): その「入場券」の数は、国策によって厳しく制限されています。全国の医学部(82大学)の総定員は、年間わずか約9,400人(令和5年度)。ここに毎年、全国のトップ層の受験生が殺到します。
  3. 「あと一歩」の現実味: 医学部受験は、共通テストで1点、二次試験で数点が合否を分ける世界です。「今年は〇点で不合格だったから、来年こそは」という感覚は、他の学部よりも強く受験生を次年度の挑戦へと駆り立てます。
  4. 親(特に医師家庭)の期待: 保護者自身が医師である場合、「我が子にも医師に」という期待は強くなりがちです。また、そうでなくても「子供の将来のために」と浪人を許容・推奨する家庭は少なくありません。
  5. 予備校の存在: 医学部専門予備校は、高額な学費と引き換えに手厚いサポートを提供します。この環境が「来年こそは」という希望を支え、結果として浪人を継続しやすい構造(予備校側のビジネス構造含む)を生んでいる側面もあります。

通常職と医師職、「浪人年数」の決定的な価値観の違い

ここで重要なのは、医学部受験における「浪人」と、一般企業への「就職」における「浪人」は、意味合いが全く異なるという点です。

一般企業が「二浪まで」を気にする理由

一般的な企業の採用(新卒一括採用)では、「二浪または二留まで」が許容範囲とされることが多く、それ以上は面接で合理的な説明が求められるのが通例です。(※出典:マイナビ「2024年卒 企業新卒採用活動調査」など複数の就活調査より)。

これは、企業側が「年齢」そのものよりも、「なぜ同年代より遅れたのか?(計画性、学習意欲、協調性などに問題はなかったか?)」という点を懸念するからです。また、入社後の組織内での年齢構成や教育プログラムの都合も影響します。

医師の世界で「年齢」が問われにくい理由

一方、医師の世界は異なります。 20代後半や30代で医学部に入学し直したとしても、医師免許を取得してしまえば、そこから先は「医師」としてのキャリアが始まります。

もちろん、研修病院のマッチング(就職活動に相当)において、年齢が全く無関係とは言えません。しかし、一般企業の就活ほど厳格ではなく、それ以上に「医師としての適性」「実務能力」「熱意」が重視されます。25歳で研修医になるのも、35歳で研修医になるのも、その後のキャリア(専門医取得など)においては、本人の努力次第でいくらでも挽回が可能です。

この「一度医師免許を取れば、浪人年数はリセットされる」という期待感が、多浪や再受験を後押しする最大の要因の一つと言えるでしょう。

三浪以上が増える「医学部受験」特有の構造

しかし、なぜ「二浪」で区切りをつけられず、「三浪以上」の沼にはまってしまうケースがあるのでしょうか。そこには、医学部受験特有の構造的な原因があります。

  1. 資金的要因(続けられる環境): 身も蓋もない話ですが、医学部受験を目指し、かつ多浪を選択できるのは、多くの場合、数年間の予備校費用(年間数百万円)を払い続けられる経済的な余裕が家庭にあるからです。医者は一般的に高給取りであるため多額の費用がかさんでも出資し続けられます。
  2. 心理的要因(サンクコストとプライド): 「これだけ時間とお金を費やしたのだから、今さら後に引けない」というサンクコスト(埋没費用)の罠。また、「自分は医学部以外行く価値がない」という過剰なプライドが、他の選択肢を排除してしまいます。
  3. 学習方法の誤り(現役の延長): 最も多い失敗がこれです。現役時に不合格だった学習方法や、通っていた予備校を浪人しても変えずに続け、「量をこなせばいつか受かる」と信じてしまうケース。敗因分析ができておらず、成績が伸び悩む(あるいは下がる)典型的なパターンです。
  4. 模試の読み違いと入試戦略の欠如: 医学部入試は大学ごとに全く傾向が異なります。「A判定だったのに落ちた」のは、その大学の入試形式(例:特定の科目の配点が極端に高い、面接・小論文の比重が高い)を理解していなかった可能性があります。
  5. 浪人コミュニティの「安心感」: 予備校などで同じ「多浪生」の友人ができると、「自分だけではない」という安心感が生まれます。これは精神衛生上は良いことですが、同時に「浪人であること」への危機感が薄れ、現役生の持つハングリー精神が失われるリスクもはらんでいます。

多浪した場合の「現実」:覚悟すべき3つのリスク

「医師になれれば年齢の壁はリセットされる」と書きましたが、多浪には看過できない明確なリスクが存在します。

  1. 莫大な金銭的コスト 医学部専門予備校に3年間通えば、学費だけで1000万円を超えることも珍しくありません。(ひどいところでは1年で1000万円取られます)ご家庭の経済的負担は計り知れません。
  2. 精神的な摩耗 社会から隔離された感覚、進学・就職していく友人たちとの差、保護者からの無言のプレッシャー。3年、4年と続けば、精神がすり減っていくのは当然です。
  3. 入学後の「放校・留年・退学」リスク これが最も深刻なリスクかもしれません。苦労して入学しても、医学部の進級は非常に厳しいものです。

6年間でストレートに卒業できる学生の割合(ストレート卒業率)は、大学によって大きく異なります。文部科学省の調査(※出典:文部科学省「医学教育の改善・充実に関する調査研究」2020年)や、各大学が公表する自己点検評価報告書などを見ると、大学によっては6年間のストレート卒業率が70%台、つまり約2〜3割の学生が一度は留年している計算になる大学も存在します。

多浪の末にギリギリで合格した場合、入学後に求められる膨大な学習量についていけず、留年・放校の危機に瀕するケースは決して少なくないのです。

大学側の多浪を敬遠する事例とその実態

2018年、特定の大学医学部で、受験生の年齢や性別によって不利な得点操作(差別)が行われていたことが発覚し、社会問題となりました。(※出典:文部科学省「医学部医学科の入学者選抜に関する調査結果」2018年)

この問題を受け、文部科学省は全大学に是正を求め、現在では「表立った年齢差別」はできなくなっています。 しかし、「実態」はどうでしょうか。

現在、入試方針として「年齢」で不利になることは(建前上)ありません。 ただし、面接試験において、多浪生や再受験生が「浪人期間(空白期間)に何をしていたか」「なぜ医師を志すのか」を、現役生よりも厳しく問われる可能性は十分にあります。

その際、学習へのブランクや精神的な不安定さ、あるいは単に「他に選択肢がなかったから」といった消極的な姿勢が見えれば、それは「年齢」ではなく「医師としての適性」を疑われ、結果的に不合格となる可能性は否定できません。

どうすれば多浪しないか/多浪沼から這い上がるか

では、貴重な人生の時間を失わないために、どうすればよいのでしょうか。

  1. 「敗因」の徹底分析と戦略変更 もし浪人が決まったら、現役時代と「同じ勉強法」「同じ予備校」「同じ生活」を絶対に続けないこと。なぜ落ちたのか(基礎力の不足か、演習量の不足か、戦略ミスか)を第三者(信頼できる指導者)の目も入れて徹底的に分析し、学習法を根本から変える勇気が必要です。
  2. 「期限」を区切る勇気(保護者との対話) 最も重要です。受験生本人も保護者も、「何浪(何歳)まで挑戦する」という期限を真剣に話し合い、設定してください。期限を区切ることで、1年1年の密度が濃くなります。
  3. 客観的な「予備校・指導者」選び 「手厚いから」という理由だけで高額な予備校を選ぶのではなく、「自分の弱点を正確に指摘し、最短距離での合格戦略を示してくれるか」という視点で指導者を選んでください。浪人をいたずらに引き延ばすような環境からは距離を置くべきです。
  4. メンタルケアと生活設計 浪人生は孤独です。しかし、生活リズムを崩し、社会と断絶してはいけません。規則正しい生活を守り、時にはリフレッシュすることも、長期戦を戦い抜く上で不可欠な戦略です。
  5. 「代替プラン(Plan B)」の用意 「医学部以外ありえない」という思考は、視野を狭め、精神的な逃げ道をなくします。歯学部、薬学部、あるいは全く別の理工系学部など、「もしダメだった場合」のプランBを具体的に考えておくこと。その精神的な余裕が、かえって本番でのパフォーマンスを安定させることにつながります。

医学部受験は、人生のすべてではありません。しかし、その挑戦は間違いなく尊いものです。どうかその貴重な情熱と時間を、最も戦略的かつ効果的に使ってほしいと心から願っています。

参考文献一覧(記事作成の根拠情報)

  • 文部科学省「医学部医学科の入学者選抜における 公正化等に関する調査について」(令和4年度)
  • 文部科学省「医学部医学科の入学者選抜に関する調査結果について(最終まとめ)」(2018年)
  • 文部科学省「医学教育の改善・充実に関する調査研究 報告書」(2020年)

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