2026.03.12

(国公立後期)なぜ山梨大学医学部「後期募集のみ」入試制度なのか

「後期募集廃止」が増える中、山梨大学医学部は流れに逆行し、独自の入試戦略を展開しています。


国公立大学の後期試験廃止の流れ

後期日程の現状

2026年度の大学入試において、国公立大学の後期日程は大幅に縮小されています。かつては多くの大学が前期・後期の両日程で学生を募集していましたが、近年は前期日程への一本化や推薦・総合型選抜へのシフトが進み、後期日程を実施する大学は年々減少しています。特に医学部医学科では、2025年度に50校中16校が後期日程を実施していたものの、2026年度には13校にまで減少しました。北海道や東北、九州などの地方では、後期日程を実施する医学部がほぼ消滅しつつあります。

この背景には、少子化による受験生人口の減少や、大学側の選抜効率化、教育リソースの集中化などが挙げられます。特に難関大学や医学部では、前期日程に優秀な受験生が集中しやすく、後期日程の意義が薄れつつあると指摘されています。

後期日程は募集人数が少なく高倍率であるため差がつかず、受験生側から見て運ゲーのような状態になっていたためこうなるのは時間の問題でした。

山梨大学医学部の「後期募集のみ」制度

こうした全国的な流れに対し、山梨大学医学部は「後期募集のみ」という極めてユニークな入試制度を採用しています。前期日程での募集を一切行わず、医学部医学科の一般選抜は後期日程のみで実施。これは全国の国公立医学部でも非常に珍しいケースであり、山梨大学医学部の大きな特徴となっています。

この制度は、前期日程で惜しくも合格を逃した受験生や、最難関大学を目指していた高学力層にとって、最後の逆転チャンスとして機能しています。また、後期日程のみの募集であるため、理三、科学大に一歩届かなかった優秀な生徒が受験しており受験生の学力層が非常に高く、競争も激化する傾向があります。


入試制度と日程の詳細

募集人員・日程・配点

山梨大学医学部医学科の2026年度一般選抜(後期日程)は、募集人員90名。出願期間は1月下旬から2月上旬、試験日は3月12日・13日の2日間にわたり実施されます。合格発表は3月20日です。

入試は「共通テスト」と「個別学力試験(2次試験)」の合計点で判定されます。配点は以下の通りです。

試験区分 配点(点) 科目・内容
共通テスト 1000 国語200、数学200、理科200、英語200、地歴公民100、情報100
個別学力試験 2300 数学600、英語600、理科1000、面接100
合計 3300

共通テストでは6教科8科目が課され、個別試験では数学・英語・理科(2科目選択)の記述式試験と面接が実施されます。理科は物理・化学・生物から2科目を選択します。

出題傾向

山梨大学医学部の入試は、全体として標準的な難易度ですが、特に化学の出題がやや難しめである点が特徴です。数学は年度によって難易度の変動が大きく、2024年度は特に難化しました。英語は2024年度から2次試験に新設され、600点満点で実施されています。

理科は2024年度から配点が1,000点に増加し、理科重視の傾向が強まっています。化学は記述式で、理論化学の出題が多く、計算力や論述力が問われる内容です。数学も記述式で、思考力や表現力が求められる問題が中心です。

化学の難易度

山梨大学医学部の2次試験における化学は、記述式で理論化学の出題が多く、計算力や論述力が問われる内容です。大問3題構成で、理論化学が中心ですが、有機化学や高分子化学の出題も見られます。全体的に誘導が少なく、難問も含まれるため、標準問題集だけでなく応用問題への対応力が求められます。

合格最低点は例年40~50%程度と、難易度の高さを反映しています。特に2024年度は理科の配点が1,000点に増加し、理科重視の傾向が強まっています。

数学・英語の特徴

数学は記述式で、思考力や表現力が問われる問題が中心です。年度によって難易度の変動が大きく、2024年度は特に難化し、合格最低点が15.5%と過去最低水準となりました。英語は2024年度から2次試験に新設され、600点満点で実施。平均点は437点、合格最低点は306点(51.0%)と、比較的得点しやすい科目となっています。

面接・グループディスカッション

面接は100点の配点で、集団面接形式が基本です。受験生3人に対し面接官2~3人で実施され、医師志望理由や将来の展望、医療倫理、地域医療への関心などが問われます。


偏差値・倍率

偏差値と全国ランキング

山梨大学医学部の後期試験の偏差値は、2025年度で72.3(河合塾データ)と、全国82校の医学部中8位という上位に位置しています。駿台やベネッセなど他の大手予備校の模試でも、偏差値は70台後半と非常に高い水準です。

この偏差値は、東京大学理科Ⅲ類や名古屋大学、千葉大学などの最難関医学部に次ぐレベルであり、全国的にも合格難易度が高い医学部の一つといえます。

後期入試集中型が功を奏していると言えます。

倍率と合格最低点

山梨大学医学部の後期試験は、例年志願倍率が15倍前後と非常に高く、実質倍率(受験者数÷合格者数)も2.7倍前後で推移しています。2025年度は志願者1,345名、受験者290名、合格者90名、追加合格者17名という結果でした。

合格最低点は、共通テストで835点/1,000点(83.5%)、2次試験では数学113.3点/600点(18.9%)、理科504点/1,000点(50.4%)、英語92点/600点(15.3%)と、科目によってばらつきがあります。特に数学や英語は難易度が高く、合格最低点が低くなる傾向があります。


受験生層

旧帝大・科学大志望者の流入

山梨大学医学部の「後期募集のみ」制度は、前期日程で東京大学理科Ⅲ類や旧帝大医学部、東京科学大学、千葉大学などの最難関校を目指していた受験生が、惜しくも合格を逃した場合の「滑り止め」や「逆転合格」の場として機能しています。そのため、受験生の学力層は非常に高く、模試で上位1.4%以内に入る実力が求められます。

実際、山梨大学医学部の受験生には、前期で理Ⅲや旧帝大医学部を受験した高学力層が多く含まれています。こうした層は、共通テストで高得点を獲得し、2次試験でも高い実力を発揮できるため、競争が非常に激しくなります。

「第一志望」ではない受験生が多数

システム上山梨大学医学部は、地元山梨県内では唯一の医学部であるものの、全国的には「第一志望」として選ばれるケースは少数派です。多くの受験生は、前期で最難関校を目指し、後期で山梨大学医学部に出願する併願や滑り止めとしての受験が中心です。

このため、合格後に入学を辞退する受験生や、いわゆる仮面浪人として在籍しながら翌年の再受験を目指す学生も一定数存在します。こうした背景から、山梨大学医学部では入学直後の休学を原則認めていません。

第一志望の人はどうすれば…

とはいえ山梨在住だったり教育システムに憧れて山梨大学医学部を第一志望に志すひともいるはず。そういう人たちは学校推薦型選抜Ⅱ(地域枠)で入学を目指そう。15名(35名に増加申請中)と枠も多く山梨の高校から進学する人はほぼこれで入学する。地域枠になってしまうのが難点だが山梨出身者であるため大きな問題にならないことを考えれば、賢い子を後期で地元に残る人は地元からとある意味バランスはとれているのかもしれない


「仮面浪人」と留年問題

実態と大学の対応

山梨大学医学部では、合格後に入学を辞退する受験生や、いわゆる「仮面浪人」として在籍しながら翌年の再受験を目指す学生が一定数存在します。これは、前期で最難関校を目指していた高学力層が、後期で山梨大学医学部に合格したものの、第一志望への未練から再受験を選択するケースが多いためです。

こうした背景から、山梨大学医学部では入学直後の休学を原則認めていません。入学後すぐに休学を申請することはできず、一定期間在籍する必要があります。この措置は、仮面浪人による定員の無駄や教育リソースの浪費を防ぐためのものです。

山梨大学医学部は「8年制」?

かつて山梨大学医学部は、進級が厳しく留年率が高いことで知られ、「8年制」と揶揄されることもありました。しかし近年は、進級判定の基準や教育体制の見直しが進み、留年率は大きく改善しています。

2023年度のストレート卒業率は77.6%で、全国平均(国公立大学87.1%)よりやや低いものの、過去に比べて大幅に向上しています。また、医師国家試験の合格率も90%台前半と高水準を維持しています。

また「山梨で留年するくらいなら浪人した方がよい」という受験生の意識もあり、合格後に入学を辞退するケース多かったことも要因

医師国家試験合格率

ただし、進級判定は依然として厳格です。医師国家試験の合格率を維持するため、卒業試験や進級試験で一定の基準を満たさない学生を留年させる方針が徹底されているためです。


入学者データ

現役・既卒比、男女比、地元率

山梨大学医学部の入学者データを見ると、現役生と既卒生の比率はほぼ半々で、2025年度は現役76名、既卒49名(うち1浪40名、2浪4名、3浪以上5名)となっています。男女比は男性86名、女性39名と、男性が約7割を占めています。

地元山梨県出身者の占有率は高いものの、全国から幅広く受験生が集まっています。特に、甲府東高校や甲府西高校など地元の進学校からの進学者が多い一方、首都圏や中部地方の進学校からの合格者も目立ちます。リニアが出来れば山梨に駅ができますから中京圏からさらに進学者が増えるでしょう。

山梨県の地域戦略

山梨県は全国でも有数の少人口県であり、人口減少が深刻な課題となっています。2025年9月に策定された「山梨県人口ビジョン2.0」では、2040年に向けてさらなる人口減少が予測されており、地域医療を担う人材の確保が急務とされています。

こうした地域事情を背景に、山梨大学医学部は地元出身者や地域医療志向の学生を積極的に受け入れる方針を掲げています。学校推薦型選抜(地域枠)も設けられており、地域医療への貢献を重視した教育が行われています。


キャンパス立地

山梨大学医学部のキャンパスは、山梨県中央市下河東に位置しています。最寄りのJR身延線「常永駅」から徒歩約15分、JR甲府駅からは身延線で約20分と、首都圏からのアクセスも良好です。中央自動車道「甲府昭和IC」から車で約15分と、車でのアクセスも便利です。

この立地は、東京や神奈川、埼玉など首都圏からの受験生にとっても通学や一人暮らしの選択肢が広がるメリットとなっています。特に、東京大学理科Ⅲ類など最難関校を目指していた受験生が、後期日程で山梨大学医学部を選択するケースが多いのは、アクセスの良さも一因といえるでしょう。

ちなみに一年時はみんなとおなじ甲府キャン、この時に友達を作りまくろう。


まとめ

山梨大学医学部は「後期募集のみ」前期日程で最難関校を目指した高学力層が集まり、競争は激化しますが、共通テストで高得点だった受験生は、2次試験で大きな失点をしなければ、枠は多いため合格のチャンスは高いでしょう。

また、山梨県という少人口県に立地しながら、首都圏からのアクセスも良好で、地元出身者と全国の高学力層が混在する多様な学生構成が特徴です。進級・卒業率も改善傾向にあり、医師国家試験合格率も高水準を維持しています。

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